エレン

たしか夏の日に、川沿いを歩いた。

あの日は風が冷たくてただ歩いてるだけで気持ちよかった

久しぶりに上を見たら空が真っ青で、その時なぜか思った

もしかして自分はここで上を見上げるために生まれてきてんじゃないかと

雨の日家の中で本を読んだ時も、猫にエサをあげたときも、誰かと海沿いを歩いた時も、船の上から異国の島を見た時も、名もない教会で音楽を聴いた時も、

そう思った

 

このなんでもない一瞬がすごく大切な気がした

 

なんでもないこの繰り返し、それだけでよかったんだろう

 

もとの生活に戻るには、もとの自分に戻るには、もう色々なものを失い過ぎたのかもしれない