『きらきらひかる』

この世には二種類の人間がいる。「普通の人間」と「普通ではない人間」だ。そして時として、「普通ではない人間」は互いに引きつけ合い、あらゆる障壁を飛び越える程のエネルギーを生み出すことがある。

 

アルコール依存気味で情緒不安定の笑子、ゲイでありながら笑子の夫で医師である睦月、睦月の恋人であり、結婚後も笑子に嫉妬するでもなく、むしろ性別を超えた友情を築く紺。あまりにも「普通」ではない歪な関係だ。一体、何人が彼らを理解するだろうか。いや、理解しようとするのだろうか。

 

しかし、彼らは互いの欠けている部分を補い合い、未来のない真っ暗闇にいるかのような不安を原動力にし、困難を希望へと変えた。三人の不思議な生活もどこまで続くかはわからない。だが彼らの前に立ちはだかる困難が、彼らの絆を強くしていくことは間違いないだろう。

 

僕はこの本を読んで、抑圧は、それに対抗する力を生み出してきた歴史を思い出した。それは宗教であり、政治であり、思想であり、性別であり、友情であり、あらゆる領域での歴史である。彼らの「夫婦」の形は確かに普通ではないけれど、笑子と睦月は紛れもなく愛し合ってる。「普通」を基準として、そこからはみ出した端数を切り捨てる現在の夫婦制度とは何か考えさせられた。

 


Billy Joel - She's Got A Way Live 1977

 

きらきらひかる (新潮文庫)

きらきらひかる (新潮文庫)