2017年

ついに2017年になった。いつも通りの元旦。違和感もない。でも、このいつも通りの元旦を送れたことは幸せな事だ。もし試験に落ちていたらまだ苦しい時間が続いていたかもしれない。


母と近所の神社にお参りに行く。子供の手を引いて歩く親子、車イスを押しながら申し訳なさそうに並ぶ老夫婦。入り口では、都議会選に立候補する議員の方が、手にたくさん持った名刺を渡し、挨拶をしていた。無視をされても頭を下げて。


彼の経歴を見るとかなり色々な事に挑戦してきたようだった。そして彼にも、ここにいるそれぞれの家族のように守るべき妻と子供がいる。まだ道半ばのこの瞬間が一番辛いだろう。安定した羨まれる何かを捨てた事を悔やむ日があるのだろうか。


でも、陽はまた昇る。いつも突き抜けるブルーを空に掲げる元旦はそんなことを伝えているように感じる。


人は選択肢を一つ手放す時、自由を一つ差し出す時、その一つ身軽になった手で大切な誰かに手を差し伸ばすのだろう。


子供の頃には退屈に思えた単調な日常は、身軽になるほどに明らかになっていく日常だった。


入り口からほどなくしてたどり着いた階段から振り返ると、議員が手から一つ差し出した名刺を、子供が受け取っていた。


頑張ろう、それだけが全ての参拝者の最大公約数だ。